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危険物の容器・梱包・ラベル一覧(実務版)
本記事は、国際海上輸送(IMDGコード)における危険物の容器・梱包・マーキング・ラベルを、現場でそのまま使える形で整理したものです。貿易実務者が実際に判断する場面で迷いやすい「何を・どの段階で・どこまで確認すべきか」を中心にまとめています。
危険物輸送における基本的な考え方
危険物の梱包は、必ず SDS(安全データシート)セクション14 に記載される UN番号・クラス・包装等級(PG)を起点にして、IMDGコードで確認します。荷主は SDS 情報の正確性に責任を持ち、フォワーダー・船会社・港湾手続きはその情報をもとに承認を行います。誤った容器やラベルの使用は輸送拒否・罰金・追加費用の原因となるため、最初の確認が重要です。
実際の危険物輸送では、まず「どの情報を根拠に判断するか」を明確にすることが重要です。以下で、その出発点となるSDSの扱い方を説明します。
危険物容器の基本種類(UN容器)
SDSとIMDGコードで危険物の特性を把握したら、次に重要なのが実際に使用する容器の選定です。ここでは、国際的に承認されたUN容器の基本形を整理します。
危険物は、国連が定めた性能基準を満たす UN認証容器(UN Packaging) に収容することが義務付けられています。容器には「UN マーキング」が刻印され、性能と用途を証明します。
主な容器タイプは次の通りです。
ドラム缶(Steel Drum / Plastic Drum)
- 鋼製:溶剤・オイル・塗料など
- プラ製:腐食性・薬品など
IBC(中型コンテナ:Intermediate Bulk Container)
- ケミカル輸送で最も利用される
- プラ製・金属製・複合タイプなど
ジェリカン(Jerrican)
小容量の液体向け。化学品・洗浄剤に多い。
袋(Bags)
粉体の危険物向け。ただし PG I では多くの品目で袋が不可。
段ボール(Boxes)
小型容器の外装として使用するケースが多い。
複合容器(Composite Packaging)
プラスチックの内装+外装の段ボールなど、液体・固体問わず使用。
実務上重要なのは、容器の「種類」ではなく UNマークの性能等級(X / Y / Z)が PG に適合しているか です。各UN容器には、性能や構造を示すマーキングが刻印されています。これを正しく読み取ることで、容器が目的の危険物や包装等級に適合しているかを判断できます。
UNマークの読み方(必須)
例:UN 1A1/X1.6/250/24/JPN/ABC1234
読むべきポイント:
- 1A1=ドラム缶・鋼製・開口なし
- X=PG I 対応(最も厳しい)
- 1.6=比重
- 250=耐圧値(kPa)
- 24=製造年
- JPN=製造国
比重・耐圧値は充填作業の安全性に直結します。液体の比重が容器の最大比重を超える場合、UN基準違反です。また、耐圧値を下回ると輸送中の膨張・破裂リスクがあります。
次に、各危険物の包装等級(PG)と容器性能等級(X/Y/Z)の対応関係を確認します。これは実務上、輸送拒否を避ける最も重要な項目です。
包装等級(PG)と容器性能の関係
- PG I(高危険度) → 容器等級 X が必須
- PG II(中危険度) → XまたはY
- PG III(低危険度) → X・Y・Z のいずれも使用可能
誤った組み合わせは 即時輸送拒否 となります。
容器を正しく選定したら、外装や中身を識別するためのラベル表示が必要です。ここでは、クラス別の主要ラベルを整理します。
危険物ラベル(クラス別一覧)
危険物ラベルは、容器・外装・コンテナに貼付する義務があります。ラベルは 耐水・耐光 が必須で、IMDGコード付属書に基づきます。
主なクラスとラベルの要点:
Class 2(高圧ガス)
- 2.1可燃性/2.2非可燃性/2.3毒性
- 実務上 2.3 は受け入れ不可が多い。
Class 3(引火性液体)
- 最も取扱量が多い
- PGによって容器基準が大きく変わる。
Class 4(可燃性固体)
4.1/4.2/4.3 によって危険性が大きく異なる。
Class 5(酸化性物質)
Class 3 と混載不可が多い。
Class 8(腐食性物質)
- 金属腐食性、皮膚腐食性
- IBCの選定に注意。
Class 9(その他の危険物)
- リチウム電池、環境有害物質
- 最も申告ミスが多い。
ラベルサイズは 10×10cm以上 が原則。細小容器は例外規定があります。
梱包やラベルを整えた後、実務上ぜひ確認しておきたいのが数量制限の特例です。限度量制度を活用すればコスト削減に直結する場合があります。
数量制限(Ltd Qty・Excepted Qty)の実務
- Ltd Qty 適用時:通常ラベルではなく専用の LTD QTY マーク(黒矢印入り菱形)を貼付
- 書類:DGD の数量欄に「Limited Quantity」または「Ltd Qty」を明記。
- メリット:危険物サーチャージが軽減される場合があり、コスト削減につながる。
マーキング(容器に印字すべき情報)
- UN番号(例:UN1993)
- 正式品名(PSN:例 Flammable Liquid, n.o.s.)
- 容器の UN性能マーク
- 荷主名・住所(必要に応じ)
- 向き表示(液体の複合容器の場合:↑↑)
マーキング不足は 港での差し止め・追加貼り付け費用の発生 に直結します。
外装(Overpack)のルール
Overpack使用時: 「OVERPACK」表示が必須 元の UNマーク・ラベルが外部から見えること 見えない場合は外装側へ同じ情報を再掲

Overpackは保護目的であり、危険物基準を緩和するものではないです。
コンテナへのプラカード(大型ラベル)
危険物を積載したコンテナには、次の表示が義務です。
- コンテナ四面(両側面・前面・後面)へ25×25cm 以上のプラカード貼付
- 通常はCFS業者または船会社が貼付するが、荷主は正確な情報提供が必須です。
再利用容器の規制(Reconditioning / 再試験)
UN容器は再利用可能だが、以下が必要です。
- 損傷・劣化の確認(歪み・腐食・変形) 必要に応じて再調整(Reconditioning)
- 金属製ドラム:5年ごとの再試験(年号マーキングが付与) 基準を満たさない容器の使用はすぐに輸送拒否につながります。
容器・梱包・ラベルの確認フロー(実務版)
危険物の実務では、次の順序で確認することが最適です。
- SDS(セクション14)確認 UN番号/クラス/PG/分類理由
- IMDGコードで該当品名を検索 梱包指示(P***, IBC***)の確認
- 容器のUNマーク確認 PGと性能等級が一致している?
- マーキング・ラベルの貼付 3面貼り(外装)を基本とする
- 数量制限(Ltd Qty/Excepted Qty)確認 適用できればコスト削減可能
- 写真撮影(実務必須) 誤貼付・破損などの後日クレーム防止
実務で多い「不適合」例(要注意)
- PG I を Y容器で出荷(最頻出)
- クラス3の PSN 誤記
- Class 9(環境有害物質)の見落とし
- 向き表示の不足(液体)
- ラベルの耐水性不足(港で剥離)
- Overpack 表示不足

これらはすべて 船積み拒否 につながります。十分に留意しましょう!
以上を踏まえたうえで、最後に実務者が特に注意すべきポイントを整理します。
実務者へのまとめ
本記事で最も重要な点は以下の通りです。
- SDS セクション14 がすべての出発点
- UN容器の性能等級(X/Y/Z)と PG の整合性が最優先
- 容器・ラベル・マーキングは IMDG の梱包指示と完全一致が必要
- Class 9 は申告ミスが最も多い
- 写真で証拠化することが実務の防御策
追加で、各容器別チェックリストや、梱包指示(P001など)の品目別一覧も作成できます。

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